楊雪二胡コンサート 2022

群馬公演レポート

楊雪 二胡コンサート 2022 群馬公演レポート


 「夢はいつまでも、結びつきは永遠に。深い伝統で共鳴し合い、共に前に進んでいきたい。今しか聞くことのできない音色を楽しんでいただけることを願って、楊雪は挑戦を続けます」

 

 −−決意を新たにするかのように本人の思いを込めたアナウンスで幕を開けた「楊雪コンサート2022」。会場となった高崎芸術劇場大劇場では、大勢の観客が楊雪の登場を今か今かと待ち構えていた。


楊雪 二胡コンサート 2022 群馬公演レポート

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 岡山市の岡山市民会館大ホール、仙台市の電力ホールでの公演を経て、2022年コンサートツアーの最終日。いずれも1000~2000人を収容する大きな会場だ。
 純粋な二胡ファンだけではこれらの会場は埋まらないはずだ。「二胡のことはあまり知らないけど、面白そうだから行ってみよう」。こう思わせる何かが楊雪のコンサートにはあるのだ。その「何か」の正体は、彼女のステージを見ればわかる。

心が震える、心と心が共鳴する

 何が起こるのかとワクワクしながら待ち構えている我々の前に姿を現した楊雪は、一曲目に「シルクロード」を選んだ。西域からシルクロードを通って中国に伝来したと言われている二胡が、かつて見た風景を我々に語り聞かせているかのような音色に、会場の空気は一変。旅人たちとともに砂漠に刻まれた歴史を眺めてきたであろう二胡を通し、観客である我々の中にシルクロードの景色が一気に思い浮かんだ瞬間だ。

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 客席とステージ、そして悠久の歴史が一気につながった。心と心が共鳴し、震えた。ときに人の心を切なさで刺すように、ときに穏やかに慰めてくれるように。表情を変え、ゆったりと私たちに寄り添い、ひとりひとりに物語を語りかけてくる二胡の音色。
 今回のような大きい会場でも、会場にいるすべての人に余すところなく思いが届くようにと、全身全霊で弾いているのがわかる。だからこそ、心が共鳴して深い感動を味わうことができるのだ。

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 しかし、今回のプログラムでは、それだけではない魅力が爆発していた。まず客席の度肝を抜いたのは、ハワイアンと二胡の融合だ。

楊雪 中国北京中央音楽学院大学院の第二回修士卒業コンサート

 ハワイアンミュージシャンをゲストに迎え、フラダンサーたちとともに楊雪がダンスを踊りながら二胡でメドレー「アロハオエ~カイマナヒラ」を奏でる。二胡の演奏のためには安定した姿勢が必須なはず。立ち上がって弾くだけでも難しいと聞く。それなのに、リズムをとって動きまでつけているのだ。いったい、どれだけの練習を重ねたのだろうか。来てくれた人みんなに楽しんでほしいという、そのための努力を、こんなにも厭わないものなのか。


楊雪 二胡コンサート 2022 群馬公演レポート
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 「二胡を弾きながらダンスを踊るのはひじょうに難しく、前人未踏の挑戦でした。でも、そういうときこそ挑戦するのが私の身上です」。座ってしっとりと聞かせる二胡のメロディーとは180度違う、“皆で楽しくつながる二胡”という新たな可能性が、そこには満ち満ちていた。

予想を超えるプログラム

 挑戦。この言葉ほど、楊雪を表すのにふさわしい単語はないだろう。他に類を見ないことを実現しては夢を塗り替える。それを繰り返し、いつの間にか、応援していた私たちを遠くまで連れていってくれる。

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 だからこそ、彼女のまわりには人が集まってくる。一緒に夢を見たいから――。今回のコンサートツアーで「楊雪のためなら」と喜んで力を貸してくれたゲストミュージシャンたち。その数は、一般的な二胡のコンサートとは段違いだ。そして、音響や照明などステージを支える技術者たちも、彼女の努力する姿に惹きこまれて、過去に例を見ない革新的な舞台をつくり上げてくれた。


 楊雪は、演奏の合間に何度も「皆さま!」と語りかけていた。観客、スタッフ、ゲストミュージシャン……「皆さまに楽しんでもらいたい」「皆さまと一緒に楽しみたい」という思いが、これでもかというほどの熱意とともに随所に詰め込まれていたのが、今回の公演最大の特徴と言える。

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 「ふるさと」から「川の流れのように」と、多くの日本人が心から愛する曲を続けて演奏し、かと思えば「リベルタンゴ」では情熱的な旋律を、「夜来香(イエライシャン)」では中国語で歌を披露。

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 くるくると表情を変える万華鏡のようなステージの極めつけは、ブリトニー・スピアーズのヒット曲「BABY ONE MORE TIME」だ。本当に二胡のコンサートなのかと目を疑う常識破りの構成からは、二胡を使ってとことん楽しんでやろうという貪欲さすら感じる。これが、楊雪なのだ。

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 本人は「自信がない」と言う。しかし、自信がない分、頑張ることにだけは人の何十倍もの力を注いできた。つねに、ほかの人ができないことをやろうとまい進する。その視線の先にあるものに、観客は熱狂する。


育ててくれたみんなと共に進んでいきたい

 今回のコンサートを象徴するのは、最後の曲「雲・海 sea of clouds」。この曲は、北京に留学中、幾度も飛行機で日中を往復したときに見た景色から発想を得たという。 「雨の日でも雪の日でも、飛行機で分厚い雲を突き抜けるとそこには晴れ間が広がっていました。どんなに疲れていても、悲しくても、大変なときでも、それを見て力をもらった」。


 曲中で朗読したのは、“より遠い景色を眺めたいなら、さらに高い場所へ上ると良い”という意味である、中国古典詩「登鸛鵲楼」の一節。この詩はまさに、高みを目指すためにさらなる努力を重ねていきたい、そう強く願う楊雪の心情を表している。

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 クライマックスにこの曲を持ってきたということは、今回のコンサートが終わっても、まだまだ先へ進むという意思表明に違いない。より高みを目指して頑張るから、皆さまもどうか一緒についてきてくださいね、というメッセージでもあるだろう。


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「涙をこらえていたけどダメですね、私は幸せです」。皆さまに育てていただいたと思っている、と涙声で語った楊雪。
 


 育ててくれたみんなと共に進んでいきたい――彼女の力強い推進力にあれよあれよと巻き込まれた我々の前にも、パアッと光り輝く晴れ間のような未来が開けたように感じたコンサートだった。


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